検査済証(けんさずみしょう)がない物件でもガイドライン調査によって増改築できる?

ガイドライン調査を活用した検査済証の無い建物の改修工事

検査済証がないことで家の工事を断られたことはありませんか?検査済証がもしなかったら、用途変更や増改築を行うときどのような問題が起きるのでしょうか。

この記事では、検査済証が存在するかを調べる方法と、検査済証がない物件はどのように増改築すればいいのかをご説明します。

検査済証って何?

増改築や用途変更の際に重要な「検査済証」ですが、まずは検査済証とは何かということを見ていきましょう。

適法の証明

建物を建てる際には、設計が終了した段階で建築確認申請をします。建築確認申請が承認されるともらえるのが「確認済証」です。しかし確認済証があるだけではその建物が適法であることの証明にはなりません。その建物が適法であると証明するためには、「検査済証」が必要になります。

検査済証を取得するには

工事が完了したら4日以内に完了検査を申請しなければいけないと建築基準法で定められています。この申請に基づいて完了検査が実施され、完了検査に合格すれば 「検査済証」が 交付されます。

なぜ、増改築に検査済証が必要なのか

用途変更

完了検査を経て交付される「検査済証」ですが、 増改築や用途変更の際にも確認済証の有無を必ず問われます。なぜ 増改築や用途変更にも検査済証が必要なのか、その理由を解説していきましょう。

増改築

建築基準法では、ある一定以上の規模の建物を新たに増改築する際には、再度建築確認を申請して承認してもらう必要があります。

「増改築」とは、元の建物に部分的に付加させることや、元の建物と同じものを作ることを指しています。もし、元の建物が違法建築で、そのまま増改築をしてしまった場合、増改築後の建物も違法建築になってしまいます。

そうなることを避けるため、元の状態で建物の適法性が証明できていない建物(検査済証がない建物)は、建築確認申請を受け付けてもらえません。

建築基準法では、以下のように書かれています。(参考までに載せておきます)

法第6条1項 建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合 …(中略)… 、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定 …(中略)… に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。 …(以下略)

改修・修繕工事

改修・修繕工事は部分や規模にもよりますが、構造に近い部分や割合が大きければ増改築と同じように 再度建築確認を申請して承認してもらう必要があります。その際、元の建物の検査済証の提出を求められます。

建築基準法で言うと、 法第六条1項 にも登場した「大規模の修繕」や「大規模の模様替え」という言葉がこれに当たります。

 エレベーター等の昇降機設置 

エレベーターを設置したい場合も、上記とほぼ同じです。ある一定以上の規模の建物に新たにエレベーターを設置する際には、再度建築確認を申請して承認してもらう必要があります。その際も元の建物の検査済証の提出を求められます。

法第87条の四 政令で指定する昇降機その他の建築設備を第六条第一項第一号から第三号までに掲げる建築物に設ける場合においては、…(中略) (要約すると法第六条1項 及び他にもいろいろ) … の規定を準用する。…(以下略)

用途変更

「 用途変更 」とは、文字通り建物の用途を変更することです。

住居ビル→一階を飲食店に(飲食店部分が200㎡を超える場合)、戸建て住宅→保育園(200㎡を超える場合)などがこれに当たります。

用途変更にあたるかは、用途と規模によりますが、おおざっぱに言えば変更後、不特定の人が大勢、頻繁に訪れる予定がある場合です。用途変更の際には、用途変更届を提出する必要があります。用途変更届には元の建物の検査済証を添付する必要があります。

用途変更の考え方は、元の建物が元の用途において適法で、更に新しい用途と現状の建築基準法に適合させることができれば安全が確保できるだろうという考え方です。ということは、元の建物が違法建築ならば、そのまま用途変更をしてしまった場合、変更後の建物も違法建築になってしまいます。 増改築の場合と同じように、元の状態での建物の適法性を証明する必要があるので、検査済証の添付が必須になっています。

検査済証が存在しない物件はどう改修すればいいのか

バカ穴

検査済み証のない物件を増改築や用途変更しようとするとなにかと壁に阻まれるということはわかりました。だけれども何もしないのはもったいない。それでは、検査済み証がない物件を活用するにはどうすればいいか、お伝えします。

検査済証がない物件は実は珍しくない

1999年以前の建物には検査済証がないことがとても多いです。いまが令和4年だから、築23年以上の建築物の半数以上が検査済証のない物件ということになります。

検査済証が存在するかを調べる

まずは検査済証が存在するかどうかを調べましょう。家に保管してあれば一番ですが、ない場合は役所に行って必要事項を伝えれば検査済証を発行した履歴があるか教えてくれます。

新築時に検査済証を取得した建物であれば「台帳記載事項証明書」を取得することで、検査済証が交付された建物、つまり新築時に適法だった建物だということを証明することができます。※検査済証を再取得できるわけではないので注意が必要です。

新築時に検査済証を取得していない建物の場合「台帳記載事項証明書」を取得しても大事な「確認済証番号」「確認済証交付年月日」の欄が空欄になっています。その場合 「台帳記載事項証明書」にはあまり期待できません。

「12条5項報告」を活用

検査済証が存在していない建物の適法性を証明するための救済措置としてこんな法文があります。

法第12条5項 特定行政庁、建築主事又は建築監視員は、次に掲げる者に対して、建築物の敷地、構造、建築設備若しくは用途、建築材料若しくは建築設備その他の建築物の部分(以下「建築材料等」という。)の受取若しくは引渡しの状況、建築物に関する工事の計画若しくは施工の状況又は建築物の敷地、構造若しくは建築設備に関する調査(以下「建築物に関する調査」という。)の状況に関する報告を求めることができる。 …(以下略)

ここには具体的なことが書いてないのでわかりにくいのですが、大まかに説明すると「ちゃんと調査をして報告をすれば、検査済証(ではないけれど)があることと同等であると証明できる」という法律です。

「ちゃんと調査を」とふんわり書きましたが、当時は具体的な基準がなく、よくわからないから行政も後込みしてしまい、なかなか「12条5項報告」は活用されてきませんでした。

ガイドライン調査が解決手段の一つに

ですが、平成26年に国土交通省から、具体的な調査基準(通称「ガイドライン調査」)が明示され、これを使って民間の指定検査機関が調査して検査済証があるのと同等であると証明できるようになりました。

ガイドライン調査とは

ガイドライン調査

では、ガイドライン調査とは、どういったことを調査するのでしょうか。

ガイドライン調査の概要

ガイドライン調査とはどういったものか、とても複雑で項目も多く、丁寧に説明するととても長くなってしまいますので、この記事では大まかな流れを解説します。もっと詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。(→約5分間の動画にジャンプします)

(→この章長いので飛ばしたい方は次の章へスキップできます)

 事前相談~情報収集 

まず、ガイドライン調査の前段階として必要な手順を列挙していきます。

1、ご依頼を受けたらまずヒアリングと簡易調査をします。ここで建物の構造、規模等を確認します。

2、わざわざガイドライン調査をするのであれば当然目的があるはずなので、目的や動機の確認も早い段階で行います。

3、また、既存図面はあるか、検査済証はあるかなど資料の確認、収集を行います。

4、もし既存図面がない場合は復元図面を作成することになります。現場を測量して建築士が一から作成します。

5、今後の進行をスムーズに行うため管轄の役所及び関係機関への事前相談にいきます。

意匠調査是正工事

1、指定確認検査機関がする調査です。現況の建築物が、竣工当時の建築基準法に適合しているかを調べます。いくつか具体例を挙げると、

ex.敷地境界線から建物の各部分がはみ出していないかを調べたり

ex.必要な面積区画の区画壁の扉が防火戸になっているかを調べたり

ex.避難経路に必要な通路幅が確保されているかを調べたり

他にもいろいろと調査します。

2、調査して当時の建築基準法上全くの適法であればいいのですが、そういったことはまずないので、是正すべき箇所を指摘されます。

3、是正すべき箇所の一つ一つに対して対応を検討します。ほとんどの場合工事をして解決する必要があるのでどのように是正していくかを考え、必要であれば図面を作成します。

4,是正工事を行い、報告書として写真付きの資料を検査機関に提出します。

*下記は、「ガイドライン調査報告書」の中身の一部抜粋。意匠関連の是正ポイントが、意匠検査の際の撮影写真をベースに、記載されてきます。是正すれば、その旨も報告書として記載されます。

躯体調査

1、躯体調査は指定確認調査機関の人は調査せず、専門の調査会社が調査します。いくつか具体例を挙げると、

ex. 柱や梁の寸法が既存図面の寸法と違わないかを調べたり、

ex. 溶接不良がないか調べたり、

ex. 鉄筋の本数が不足していないかを調べたり、

ex. コンクリートが劣化していないかを調べたり、

他にもいろいろ調査します。

2、構造体に不備があると強度が不足してしまうのでその箇所を是正するよう指摘されます。

3、是正といっても構造体は一部取り除いて付け足すようなことができないのでほとんどの場合、耐震工事にて是正や劣化による構造不安の解決策とします。耐震工事の計画を立てて図面を作成します。

4、もしも躯体の強度不足が深刻だとその分調査の量も増えますし、大規模な耐震工事が必要になります。

5、また、古い物件は躯体回りをアスベストで覆っていることが多く、躯体調査の前にアスベスト撤去工事を行う可能性が高いです。(アスベスト撤去工事は専門の資格を持った業者にしかできないので、これがあるかないかで、費用が大幅に変わってきてしまいます。)

6、躯体調査報告書を作成し、指定確認検査機関に提出します。また、耐震工事を選択する場合は、耐震改修設計報告書も提出します。

ガイドライン調査の総括

1、指定確認検査機関は躯体調査報告書の内容(耐震計画の内容)と合わせてガイドライン調査報告書を作成します。

2、調査の結果とどのような是正が必要か、既存不適格か等を報告します。(事前の指摘事項として掲載された部分を是正した場合は、是正項目から外れます)

3,ガイドライン調査報告書を添付することにより、当初目的の工事が進められるようになります。

検査済証がない場合は実績のある工務店に相談を

専門家

ここまで述べてきたことを飛び込みで普通の工務店さんに依頼すると大抵は断られてしまいます(笑)ならば自分でしようと思うと、どうしても障害が多く、手続きも複雑で、専門家の知識が必要になってきます。

ガイドライン調査報告書を発行出来たら次は目的の工事をすると思います。このタイミングでなら普通の工務店さんでも快く引き受けてくれるかもしれません。ですが、ガイドライン調査の時点でも様々の工事が必要となりますので、このタイミングで新たに工務店と契約するのは費用面でも労力面でも非常にもったいないです。

 ガイドライン調査→設計→施工、全てを一任

実績のある工務店なら、煩雑で難解なガイドライン調査から改装工事完了までを一式で依頼できるので安心です。

また、検査済証の無い建物でも、改修工事をして、建物の価値を高められれば、工事の費用を工事後の収入で回収できる可能性が高まります。このため、トータルで見ると費用を抑えることにもなります。

実績のある工務店は少ない

とはいえ、ガイドライン調査は平成26年から始まった新しい試みです。この制度を使ったことがある人はもちろん、聞いたことがあったという人も少ないのではないでしょうか。

同じ理由でガイドライン調査の実績がある工務店はまだまだ少ないのが現状です。

まとめ

工務店

検査済証がない物件は、単なる紛失が理由であれば、 台帳記載事項証明書を取得することで検査済証と同等の効力を発揮することができます。

紛失ではなく、最初から検査済証を発行していない物件は、ガイドライン調査をしてガイドライン調査報告書を取得することで検査済証の代わりにはなりませんが、同等の効力を発揮し改修工事を進めることができます。

(ガイドライン調査を動画で説明→こちら

台帳記載証明書またはガイドライン調査報告書を取得すれば以下のことができるようになります。

  • 増改築
  • 改修・修繕工事
  • エレベーター設置
  • 用途変更

既存の建築物は、私たちにとっても社会にとっても役立てていかなければならない大切な資源です。

古くても思い入れのある大事な建物をこれからも活躍させたいと思ったら、ぜひ、ガイドライン調査実績のある私たちT&D工務店にご相談ください。

お問い合わせフォームはこちらになります。 ⇒ https://and-td.com/contact

電話番号 ⇒ 03-6265-3188 FAX⇒03-6336-6731

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