ガイドライン調査を利用した検査済証の無い建物の改修工事vol.7 第2章 工事動機、目的、きっかけ

エレベーターの設置相談から

事のきっかけは、階段がつらくなってきたのでエレベーターをつけたいというご要望からスタートします。地下1階、地上6階なので、確かに階段のみでの移動は非常につらいものがあります。

実は弊社も何度か工事をさせて頂いていたお客様でしたので、施工中も階段での移動が非常にきつかったことも記憶しています。またお客様がご高齢の為、今後は更に階段での移動は難しいものになることは明白でした。

一般的には、あまり知られていませんが、エレベーターにも業務用とホームエレベーターというものがあり、大きくは2種類に分かれています。ホームエレベーターのほうが安価に設置はできますが、あくまで一般家庭用であることと、階数や昇降スピード、積載においても制限があります。

1階では店舗を営まれており、他の階は主に住居仕様だったため、レイアウトによっては、双方ともに選択肢はある状況でした。

敷地としては、外部増設は難しく、建物内にスラブを貫通させて新設する以外には選択肢はない状況です。

エレベーターの設置工事と一口に言っても、スラブ貫通(床の開口)やエレベーターの昇降路を構造上問題の無い形で新たに組んだり(鉄骨工事)、各階のエレベーター通過位置の解体、それに伴うレイアウト変更、復旧、避難経路の確保や導線(建築工事)、電源供給や安全装置(電気工事、消防設備工事)、設備配管の経路が影響するようであればその移設やリニュアル(衛生設備、空調、換気設備工事等)様々な工事が関ります。

その為、木造2階建て等の建物に設置する場合よりも、このような建物のケースは大工事になってしまいます。                      *敷地に増設可能スペースがある場合は、外部増設も可能ですが、いずれにしても塔屋を増築しなければならないので、それなりの建築費用になるかと思います。

エレベーターの設置に関しては、一般のお客様ですとエレベーターのみの価格だけを見られている(エレベーター本体の価格と設置業者の施工費)方が多い為、付随する建築費用のほうが、コストがかかる場合が多いことは事前に細かな説明とご理解を頂く必要があるかもしれません。

昇降機(エレベーターや他も)と呼ばれるものは要検査済証

先般のブログでも、ご案内させて頂いておりますが、エレベーターを設置する場合は検査済証が必要です。これに関しては、ホームエレベーターもさることながら、階段に設置する自動昇降するような椅子なども昇降機というカテゴリーに分類されているものは対象になってしまいます。*ホームエレベーターに関して、4号建物(主に木造2階建て)の場合は市区町村にもよりますが、検査済証が無い場合でも比較的簡易な手続きにて設置可能となるケースもあるようです。

エレベーター設置計画の時点で、指定検査機関に確認申請を出す必要があり、その時に、検査済証が必要となります。また施工後は完了検査を受ける必要があり、通過して、エレベーターの検査済証が発効されます。

ガイドライン調査が必要→建物自体の長寿命化検討

今回の状況下では、ガイドライン調査を行う必要性が出てきます。当初はエレベーターをつけたいという目的のみではありましたが、その目的を物理的に達成するためだけの最短コースの工事のみを行うことは難しくなります。

これは勿論一概には言えないのですが、建物全体を下記のような状態にするために、より多くの費用が掛かる可能性が非常に高いためです。

  • 建設当初の法律に合わせて、適法な状態にする
  • 躯体(構造上の)安全を確保する
  • エレベーター設置後のレイアウトにおいても適法な設計計画

ただ、ここで、そもそもの目的に至る動機や利便性を向上させる本当の意味や将来的な価値も視野に入れ熟考してみると、ここまですることも、ある意味理にかなっている部分もあります。

  • エレベーター設置→利便性以外にも価値の向上→使い続けたい残したい
  • ビルを残す→今後の地震の心配→耐震工事→施行範囲の増大
  • 施行範囲の増大→設備や内装の改修→さらなる価値の向上

せっかくエレベーター設置をしても、古い建物であれば地震も心配です。建物自体も今後残せる状態にしておきたいものです。ガイドライン調査を実施すると、躯体調査もあるので、構造上の強度がとれず、是正対象になる可能性は高いと思います。

ただ、この是正も躯体に対して行うのは場所によっては、非現実的になりますが、耐震工事により代替することが概ね可能です。

コストをかけエレベーターを設置するのであれば、将来に残せるビルにこの機にリニュアルをかけてしまうほうが合理的です。旧耐震であれば、重要性も高まります。

その為の解体範囲も広がり、レイアウトもおのずと変わるため、設備や内装のリニュアルも一気に行うことが合理的となります。

建替えとの比較検討

このような打合せを重ねていく中で、やはり建物自体を残すのか、建替えるのかという根本的な検討もあったようです。

「ガイドライン調査を活用したリニュアル」 対 「建替え」、双方のメリットデメリットや価格比較(かなりの想定にはなりますが)検討を行うことになりました。

前者のほうは、概算予測の難易度が高く、躯体状況、意匠の法適合状況、耐震設計予測からのズレ幅、それに伴うレイアウト変更によるズレ幅など、概算予測が難しいため、かなりのブレ幅をもった算出となりました。後者は、一般的な仕様での建替えの概算。

勿論物件にもよるとは思いますが、今回のケースでは、かなりのブレ幅を持っても、建替えコストよりは、かなり抑えられる概算となりました。

当初は、エレベーターを設置するという目的でありましたが、結果として、将来残せる建物にするための、耐震化含むリニュアル化を「ガイドライン調査」を活用して行うことを選択いただきました。

次回から、実際にガイドライン調査を進めていく過程をご案していければと思います。

次回に続く・・・

ガイドライン調査の概要vol.2 youtubeもご覧ください

ガイドライン調査について、何回かに分けてyuotubeにも投稿していきます。まずは、第2回目の投稿となりますが、よろしければ最後までご視聴ください。

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